【コラム】遅延が最も多いのは、金曜の朝8時台


このコラムについて

「朝は電車がいつも遅れる」、「朝は時間通りに来ることの方が珍しい」、「○曜日は遅れが多い気がする」なんとなくそう感じている人は多いと思います。私もそうでした。

当ブログが2024年11月1日から2026年8月27日までに記録した9,157件を、 曜日と時間帯で数え直してみました。実感は、だいたい当たっていました。

なお、この記録は「当ブログが受け取った通知の件数」であって、 「実際に起きた輸送障害の件数」ではありません。同じ事象でも続報が届けば その分だけ増えます。記録の取りこぼしもあり得ます。

曜日 — 金曜が最多、日曜が最少

曜日 件数 金曜を100としたとき
1,218 83
1,337 91
1,351 92
1,423 97
1,468 100
1,269 86
1,091 74

金曜が1,468件で最多。日曜の1,091件と比べると1.35倍です。

平日が休日より多いのは当然として、注目したいのは平日の中に傾きがあることです。

月 1,218 → 火 1,337 → 水 1,351 → 木 1,423 → 金 1,468

月曜から金曜にかけて、きれいに増えていきます。 月曜と金曜では250件の差、率にして2割の開きです。

曜日ごとの運行本数はほとんど変わらないはずなので、 これは本数では説明がつきません。

時間帯 — 8時台が突出

件数 件数
04 57 12 426
05 155 13 438
06 235 14 428
07 383 15 450
08 875 16 515
09 736 17 590
10 530 18 649
11 391 19 574

8時台の875件が最多で、次いで9時台736件。 夕方は18時台の649件が山になります。

朝の山のほうが、夕方より明らかに高いのが特徴です。 8時台875件に対して18時台649件。1.35倍の差があります。

7時台383件から8時台875件へは2.3倍に跳ね上がり、 9時台736件、10時台530件と下っていきます。 8時台の1時間に、集中して起きています。

朝の遅延は、中身も違いました

件数だけでなく、理由の内訳も朝は違っていました。

8時台の875件を理由ごとに分けると、こうなります。

理由 8時台 8時台での割合 全体での割合
救護活動・急病 172 19.7% 8.5%
車両点検・車両故障 143 16.3% 10.4%
踏切内点検・踏切支障 91 10.4% 18.0%
荷物挟まり・ドア関係 88 10.1% 5.2%
線路内点検 83 9.5% 15.9%

踏切と線路は、朝はむしろ割合が下がります。 代わりに増えるのが、救護活動・急病荷物挟まり・ドア関係でした。

この2つに旅客転落・接触を加えた3分類を、時間帯ごとに見るとこうなります。

その時間の記録数 3分類の件数 割合
6時 235 28 11.9%
7時 383 67 17.5%
8時 875 284 32.5%
9時 736 198 26.9%
10時 530 82 15.5%
18時 649 137 21.1%
19時 574 147 25.6%

全期間では17.1%ですから、8時台は1.9倍です。

急病777件のうち172件(22%)が8時台の1時間に集中しています。 荷物挟まり478件のうち88件も同じです。

朝のグラフの山は、設備が壊れて高くなっているのではありません。

路線によって、山の位置が違います

全体では8時台が最多ですが、路線ごとに見るとずれがあります。

路線 最も多い時間帯
中央線快速 8時台(89件)
東海道本線 8時台(69件)
京浜東北・根岸線 8時台(93件)
常磐線 9時台(91件)
湘南新宿ライン 9時台(117件)
山手線 18時台(40件)

山手線だけが夕方に山があります。 通勤の行き帰りだけでなく、買い物や食事で夜に使う人が多い路線なので、 そのぶん夕方以降の利用が厚いということか、もしくは山手線に関しては記録に残っていない遅延が多いということかもしれません。

曜日でも山手線は独特です。金曜62件に次いで土曜56件が多く、 平日平均(47件)を上回っています。 一方、中央線快速は土曜73件・日曜69件で、平日平均110件の6割ほど。 同じ会社の路線でも特殊であるということがわかります。


所感

朝の遅延に設備起因は多くない

数える前は、朝に遅延が多いのは「本数が多いから」だと思っていました。 中身を見て、違うとわかりました。

8時台に増えているのは、急病と、ドアに挟まる荷物です。 設備の点検はむしろ割合が下がっています。

急病が19.7%、荷物挟まりが10.1%。どちらも全体の2倍前後です。 そして、この2つに共通しているものがひとつあります。

人が詰め込まれていることです。

因果関係を当ブログのデータで証明することはできません。 朝は体調を崩しやすい時間帯だという説明もあり得ます。ただ、あの乗車率や車内温度、空気感は健康を害するに十分だと人によっては感じることと思います。

混雑は天災ではない

ここが大事なところです。

踏切が壊れるのも、線路に物が落ちるのも、ある程度は避けられません。 でも混雑は、誰かが決めた結果です。

その時間に何本走らせるか。何両つなぐか。どこにどれだけ輸送力を割くか。 決めているのは会社です。混雑は自然現象ではなく、経営判断の出力です。

その判断の結果として、1日でいちばん人が乗っている1時間に、 1日でいちばん多くの遅延が起きています。

7時から9時までの3時間で1,994件。1日の8分の1の時間に、 2年弱の記録の21.8%が集まっています。

会社は「1日あたり何件」と数えているかもしれません。 でも利用者から見れば、深夜の1件と朝8時台の1件は、まったく別のものです。 足止めされる人の数が桁で違います。

対策が「利用者に動いてもらう」ほうを向いている

では、会社は朝の山に何をしているか。

代表的なのがオフピーク定期券です。ピークを外して乗れば安くなる。 2023年3月の導入時で約10%割安、2024年10月以降は約15%割安。

朝の山そのものに手を付ける施策なので、方向性は正しいと思います。

ただ、これは利用者が行動を変える施策です。 早起きして、生活を組み替えて、混雑を避ける。負担するのは利用者です。

輸送力を増やすほうの話は、あまり聞こえてきません。

急病172件と荷物挟まり88件が8時台に集まっているのなら、 それは利用者の努力不足なのでしょうか。 私にはそうは思えません。詰め込みを設計しているのは会社のほうです。

金曜に増えていく理由を、会社は把握しているのか

もうひとつ引っかかったのが曜日です。

月 1,218 → 火 1,337 → 水 1,351 → 木 1,423 → 金 1,468

月曜から金曜まで、一度も下がらずに増えていきます。 差は2割。 運行本数はほとんど変わらないはずですから、本数では説明がつきません。

理由は私にはわかりません。データからは言えません。もしかしたら偶然の結果なのかもしれません。

ただ、これだけきれいな傾向が出ているものを、 会社が把握していないはずがありません。運行のデータも、故障の記録も、勤務の記録も、持っているのは会社です。遅延の現状を把握し対策を講じる気があるのであれば、把握していないはずはないと思います。

私が個人でメールを集めて数えられる程度のことです。 把握していて公表しないのか、把握していないのか。 どちらだとしても、利用者としては困ります。

一応、進んでいることもある

批判ばかりでは公平でないので、進んでいることも書きます。

  • 混雑の平準化を狙ったオフピーク定期券が導入されています (2023年3月の導入時で約10%割安、2024年10月以降は約15%割安)
  • 2026年2月10日の対策6項目には「異常時の対応力向上」として 事象発生から30分以内での降車誘導の準備指示の徹底が挙げられています
  • 同じ6項目で「検査や点検のレベルアップ」「予兆把握の取組み」も掲げられています

30分以内の降車誘導は、まさに朝の山で効いてくる話です。 そこに手を入れたこと自体は評価します。

ただ、これは止まったあとの話です。 8時台に875件も止まっている状態そのものを、 どうするつもりなのかは、まだ聞こえてきません。


出典

このコラムで使ったデータ

  • 当ブログの運行情報記録 9,157件(2024年11月1日〜2026年8月27日) 検索・絞り込みができる一覧:https://jrechien.com/archive/

引用した資料

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