【コラム】中央線の遅延について考える


このコラムについて

中央線快速には「よく遅れる路線」というイメージがあると思います。 このコラムは、当ブログが2024年11月1日から2026年8月27日までに記録した693件を 集計して、その中身を見ていくものです。

数えてみたら、他の路線とは遅延の性質そのものが違うことがわかりました。

  • 遅延の理由が、設備ではなく「人」に関わるものに偏っている(63.4%)
  • 他の路線では上位に来る「線路内点検」「踏切」が、中央線では合わせて11.5%しかない
  • 遅延が起きるのは区間ではなく
  • 他の路線からの波及は19%で、15路線の中でも少ないほう
  • 土日の記録が平日の約6割。最も平日に偏った路線

数字を見ていく前に、この記録で言えることと言えないことを書いておきます。

この記録は「当ブログが受け取った通知の件数」であって、 「実際に起きた輸送障害の件数」ではありません。 同じ事象でも続報が届けば その分だけ件数が増えます。意味があるのは件数そのものではなく、 理由や場所の構成比のほうです。記録の取りこぼしもあり得ます。

693件の内訳はこうなっています。

  • 自線内で発生:505件
  • 他路線から波及:118件
  • 発生場所不明:70件

このあとの理由・場所の集計は、自線内で起きた505件だけに絞っています。 他の路線から波及した分を混ぜてしまうと、中央線ではなく直通相手の性格を 見ることになってしまうからです。

遅延理由 — 「人」に関わるものが上位

理由 件数 構成比
救護活動・急病 82 16.2%
車両点検・車両故障 75 14.9%
荷物挟まり・ドア関係 66 13.1%
安全確認 54 10.7%
人身事故 54 10.7%
旅客転落・接触 35 6.9%
線路内点検 31 6.1%
線路内立入り 29 5.7%
踏切内点検・踏切支障 27 5.3%
信号関係 17 3.4%

救護活動・急病、荷物挟まり・ドア関係、安全確認、人身事故、旅客転落・接触、 線路内立入り。これらを合わせると320件(63.4%)です。 人に関わる事象が3分の2近くを占めています。

一方で、線路内点検と踏切内点検は合わせて58件(11.5%)しかありません。

東海道本線と並べると、違いがはっきりします

同じ期間の東海道本線(自線内413件)と比べてみます。

中央線 東海道本線
線路内点検+踏切内点検 11.5% 45.3%
救護活動・急病 16.2% 4.4%
荷物挟まり・ドア関係 13.1% 上位10位圏外

東海道本線は設備や線路が理由の大半、中央線は人に関わる事象が大半。 同じJR東日本の路線なのに、遅れ方がまるで逆です。

発生場所 — 区間ではなく「駅」で起きています

発生場所として駅名や区間が書かれていた476件の上位15です。

場所 件数
新宿 36
立川 24
国分寺 24
御茶ノ水 22
四ツ谷 21
三鷹 21
荻窪 20
東京 18
武蔵境 17
国立 17
新宿〜中野 15
西八王子〜高尾 15
中野 15
吉祥寺 15
御茶ノ水〜四ツ谷 12

上位のほとんどが駅名です。 東海道本線だと「品川〜川崎」「茅ケ崎〜平塚」のような 区間が並ぶので、ここも対照的です。理由の構成(人に関わる事象が多い)を考えれば 納得がいきます。人にまつわることは、走行中ではなく駅で起きるからです。

他路線からの波及は19%

118件が他の路線からの波及でした。19%は15路線の中でも低いほうの数字です (最高は総武線の75%)。

発生元の路線 件数 波及分の割合
青梅線 51 43%
中央総武線(各停) 42 36%
山手線 7 6%
武蔵野線 6 5%
埼京川越線 5 4%

波及元は青梅線と中央総武線各駅停車でほぼ8割。中央線は他の路線との直通が 限られているぶん、外からの影響を受けにくいということです。

ところが逆方向はまったく違います。 中央線は他の路線の記録で発生元として 377回名指しされていて、これは15路線の中で最多です。 とくに青梅線は、他路線から波及した352件のうち302件(86%)が中央線からでした。

つまり中央線は、遅延を受けにくくて、出しやすい路線なんです。

(「出した」回数は当ブログが記録している路線への波及だけを数えたものです。 記録していない路線への波及は入っていないので、実際はもっと多いはずです。)

時間帯と曜日

最多は8時台の89件。朝のラッシュにはっきり偏っています。

93 102 118 113 125 73 69

土曜73件・日曜69件で、平日平均110件のおよそ6割しかありません。 当ブログが記録している路線の中で、最も平日に偏っています。

理由の構成(人に関わる事象が3分の2近く)を考えると、通勤時間帯の混雑と 結びついた分布に見えます。ただ、データから因果を断定することはできません。

全路線の中での位置づけ

指標 中央線 15路線での位置
記録件数 693件 6位
他線波及率 19% 下から4番目(波及を受けにくい)
他路線に「出した」回数 377回 1位(波及を与えやすい)
平日への偏り 土日が平日の約6割 最大

所感

「乗客のせい」で終わらせていいんでしょうか

中央線快速で自線内に起きた遅延の63.4%は、救護活動・急病、荷物挟まり、 安全確認、人身事故、旅客転落、線路内立入りといった、人に関わるものでした。

この手の数字は、たいてい「利用者のマナーの問題」として語られます。 実際、国土交通省の資料でも大規模な遅延の原因の55.0%が「旅客関係」に 分類されていて、会社側の要因は約9%しかありません。

でも、利用者だけに責任を押し付けて良いかというと、それは無理があると思います。

急病人が出る、荷物が挟まる、ホームで接触が起きる。これって 混んでいればいるほど増えるものですよね。そして混雑の度合いは、 車両の数、編成の長さ、運行本数、ホームの広さも関わっています。 どれも利用者側ではなく会社マターです。

乗客が原因の事象が多い路線というのは、言い換えれば 乗る人の数に対して輸送力が足りていない路線なんじゃないでしょうか。 それを「部外要因」として会社の外に切り分けてしまい、会社として何の対策も行わないこと自体に、私は疑問があります。

「荷物挟まり・ドア関係」が13.1%という数字

なかでも気になるのが、荷物挟まり・ドア関係の66件(13.1%)です。 東海道本線ではこの理由は上位10位にも入りません。中央線だけの現象です。

ドアに荷物が挟まるのは、無理に乗り込む人がいるからです。 そして無理に乗り込むのは、次を待つ余裕がないくらい混んでいるか、 待ったところで同じだけ混んでいるからでしょう。

もちろん「マナーの問題」と呼ぶことはできます。ただ、 マナーに頼らないと成り立たない輸送を提供していること自体が 問われるべきなんじゃないかと思います。

ホームドアが間に合っていない

人身事故が10.7%(54件)、旅客転落・接触が6.9%(35件)。合わせて89件です。 このあたりはホームドアがあれば、かなりの部分は防げます。

JR東日本のホームドアは2025年度末時点で162駅。2031年度末頃までに 東京圏在来線の主要路線330駅へ整備する予定で、当初の2032年度末頃から 1年前倒しされました。

前倒し自体は評価したいところです。ただ裏を返せば、終わるのはまだ5年以上先。 その間も、駅で人が線路に落ちて、列車に接触する事故は記録され続けます。

そして、1年前倒しできたということは、それだけの余力はあったということです。 だったらなぜ、もっと早く、もっと大きく前倒しできなかったのか。 私はここに企業努力の不足を感じます。

中央線は遅延を「出す」側です

中央線が他路線から受ける波及は19%と少ないのですが、逆に他路線の記録で 発生元として名指しされた回数は377回。15路線の中で最多です。 青梅線が受けた波及352件のうち、302件(86%)が中央線から来ています。

つまり青梅線を使っている人は、中央線で起きたことの影響を日常的に受けています。 この一方通行な関係は、直通運転という会社の設計判断が作ったものです。

便利にするために路線をつなぐのなら、 つないだ側の路線をちゃんと安定させる責任もセットのはずです。

一応、進んでいることもある

  • ホームドア整備の1年前倒し(2031年度末頃までに330駅)
  • 電車線・軌道の二重化など設備の強化
  • 2026年2月10日の対策6項目(検査・点検のレベルアップ、業務フローの見直し、 2026年度の修繕費増額、2027年度から技術系の採用を約150人増)
  • オフピーク定期券(2023年3月の導入時で約10%割安、2024年10月以降は約15%割安) による混雑の平準化

オフピーク定期券は、混雑そのものに手を付ける施策なので評価しています。 ただこれ、利用者に行動を変えてもらう施策であって、 輸送力を増やすものではないんですよね。 どちらが負担を引き受けるのかという話は、もう少し議論されてもいいと思います。


出典

このコラムで使ったデータ

  • 当ブログの運行情報記録(2024年11月1日〜2026年8月27日、中央線快速693件) 検索・絞り込みができる一覧:https://jrechien.com/archive/

引用した資料

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