このコラムについて
このコラムは、当ブログが2024年11月1日から2026年8月25日までに記録した 京浜東北・根岸線の676件を集計したものです。
数えてみて、この路線の面白いところが見えてきました。
- 遅延の理由が設備と乗客のちょうど中間にある
- 集中しているのは川崎〜鶴見〜新子安
- 他の路線から巻き込まれた遅延が39%
- その波及元が南側に偏っている
数字を見ていく前に、この記録で言えることと言えないことを書いておきます。
この記録は「当ブログが受け取った通知の件数」であって、 「実際に起きた輸送障害の件数」ではありません。 同じ事象でも続報が届けば その分だけ増えます。意味があるのは件数そのものではなく、 理由や場所の構成比のほうです。記録の取りこぼしもあり得ます。
676件の内訳です。
- 自線内で発生:385件
- 他路線から波及:243件
- 発生場所不明:48件
このあとの理由・場所の集計は、自線内で起きた385件だけに絞っています。 他の路線から波及した分を混ぜると、京浜東北線ではなく隣の路線の性格を 見ることになってしまうからです。
遅延理由 — 設備と乗客のちょうど中間
| 理由 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 踏切内点検・踏切支障 | 68 | 17.7% |
| 荷物挟まり・ドア関係 | 54 | 14.0% |
| 車両点検・車両故障 | 52 | 13.5% |
| 救護活動・急病 | 45 | 11.7% |
| 線路内点検 | 43 | 11.2% |
| 安全確認 | 30 | 7.8% |
| 線路内立入り | 27 | 7.0% |
| 信号関係 | 16 | 4.2% |
| その他 | 15 | 3.9% |
| 旅客転落・接触 | 12 | 3.1% |
踏切と線路内の点検を合わせると28.8%。 一方、荷物挟まり・救護活動・安全確認・線路内立入り・旅客転落・人身事故といった 人に関わるものは46.8%。
これは他の路線と比べると、ちょうど中間の位置です。
| 京浜東北・根岸線 | 東海道本線 | 中央線快速 | |
|---|---|---|---|
| 踏切+線路内点検 | 28.8% | 45.3% | 11.5% |
| 人に関わるもの | 46.8% | 30.8% | 63.4% |
東海道本線は設備、中央線快速は人に偏っているのに対し、 京浜東北・根岸線はその中間にあります。 大宮から大船まで、郊外の踏切がある区間と、都心の混雑する区間の 両方を通り抜けていく路線なので、納得のいく結果ではあります。
なお「荷物挟まり・ドア関係」が14.0%(54件)と2番目に多いのは、 中央線快速(13.1%)と並ぶ水準です。混雑の激しい路線に共通する特徴のようです。
発生場所 — 川崎〜鶴見〜新子安に集中
発生場所として駅名や区間が書かれていた385件の上位15です。
| 場所 | 件数 |
|---|---|
| 鶴見〜新子安 | 35 |
| 川崎〜鶴見 | 30 |
| 大森〜蒲田 | 20 |
| 蒲田〜川崎 | 19 |
| 桜木町 | 15 |
| 南浦和 | 13 |
| 赤羽 | 13 |
| 東十条〜王子 | 11 |
| 大宮 | 11 |
| 横浜 | 11 |
| 大井町 | 10 |
| 西川口 | 8 |
| 川崎 | 7 |
| 東十条 | 7 |
| 磯子 | 6 |
大森〜蒲田〜川崎〜鶴見〜新子安を合わせると104件で、 場所がわかっている分の27%になります。 大宮から大船まで59kmある路線の中で、東京都と神奈川県の境あたりに 4分の1が集まっている計算です。
他路線からの波及は39%
243件が、他の路線で起きたことの巻き込みでした。
| 発生元の路線 | 件数 | 波及分の割合 |
|---|---|---|
| 東海道本線 | 93 | 38% |
| 横須賀線 | 55 | 23% |
| 横浜線 | 52 | 21% |
| 宇都宮線 | 17 | 7% |
| 埼京川越線 | 11 | 5% |
| 山手線 | 9 | 4% |
| 高崎線 | 4 | 2% |
東海道本線・横須賀線・横浜線の3つで82%を占めます。 どれも横浜より南側でつながっている路線です。
京浜東北線は東海道本線・横須賀線と線路を並べて走り、 根岸線には横浜線の列車が直通してきます。 大宮側(宇都宮線17件、高崎線4件、埼京川越線11件)からの波及は 合わせて13%しかありません。
つまりこの路線は、南側の事情に大きく左右される構造になっています。
時間帯と曜日
最多は8時台の93件でした。朝ラッシュに偏っています。
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 93 | 100 | 86 | 106 | 110 | 100 | 81 |
曜日による差は小さめです。最多の金曜110件と最少の日曜81件で1.4倍ほど。 土曜100件は平日の平均(99件)とほぼ同じで、 中央線快速が土日に6割まで落ちるのとは対照的です。
理由の構成が設備と乗客の中間にあることを考えれば、 通勤客の増減だけでは説明がつかないということでしょう。 ただしこれは私の解釈で、データが示しているのは分布だけです。
全路線の中での位置づけ
| 指標 | 京浜東北・根岸線 | 15路線での位置 |
|---|---|---|
| 記録件数 | 676件 | 7位 |
| 他線波及率 | 39% | 6位 |
| 他路線に「出した」回数 | 354回 | 3位 |
| 受けた−出したの差引 | +111 | 3位(出す側) |
受ける量(243回)より出す量(354回)が多く、 やや「出す側」に寄った路線です。
所感
踏切が17.7%あることについて
自線内の遅延で最も多い理由が、踏切内点検・踏切支障でした。
京浜東北線というと都市部の路線という印象がありますが、 大宮から大船まで59km、埼玉県・東京都・神奈川県をまたいで走っています。 その途中には踏切のある区間が残っています。
踏切をなくすには立体交差化しかなく、これは莫大な費用と年数がかかります。 しかも鉄道会社だけで決められる事業でもありません。 だから「なぜ放置しているのか」と単純に責めるつもりはありません。
ただ、踏切が理由の遅延が2年弱で68件記録されたという事実は、 利用者として知っておいてよいことだと思います。
混雑の問題はここにも
荷物挟まり・ドア関係が14.0%(54件)で2番目に多い理由でした。 中央線快速の13.1%と並ぶ水準です。
ドアに荷物が挟まるのは、無理に乗り込む人がいるからです。 そして無理に乗り込むのは、次を待つ余裕がないくらい混んでいるからでしょう。
救護活動・急病の11.7%(45件)も同じ話だと思っています。 混雑は事業者が決める変数です。車両の数、編成の長さ、運行本数。 それを「お客さま都合」として整理してしまうのは、 少し都合がよすぎるのではないでしょうか。
削って、事故が起きて、戻した
2026年の1月から2月にかけて、大きなトラブルが立て続けに起きました。 この路線自身も当事者です。 1月16日の山手線・京浜東北線の停電は、 運休747本、影響約67万人、体調不良の申告16名(うち救急搬送5名)という規模でした。
原因は、田町駅の改良工事のあと、送電を再開する際に 検電接地装置の取扱いを誤り、接地したまま送電したことと公表されています。 報道によれば、2025年12月にも同様のトラブルが起きていたそうです。
そして2026年2月10日、JR東日本が公表した対策6項目にこう書かれています。
2026年度の修繕費を増額し、2026年度末までに、コロナ期の影響を全て取り戻すべく 交換・修繕を実施
コロナ期に設備の修繕を抑えていた。そして事故が相次いだあとで、 「全て取り戻す」と言い出したわけです。
取り戻す必要があると会社が判断したなら、それまでは足りていなかったということです。
67万人が足止めされ、救急搬送まで出てから動き出した。 順番が逆なんじゃないでしょうか。
同じ失敗が2か月足らずの間に繰り返されていたのなら、 それは現場の作業者個人の問題ではなく、 そういう状態を放っておいた管理側の責任だと私は思います。
一応、進んでいることもある
- ホームドアは京浜東北・根岸線で45駅に整備済み(2025年度末時点)。 全体では162駅で、2031年度末頃までに330駅へ(当初計画から1年前倒し)
- 電車線や軌道の二重化など、断線に備えた設備の強化
- 2026年2月10日の対策6項目(業務フローの見直し、ダブルチェック体制の強化、 異常時対応力の向上、検査・点検のレベルアップ、技術系の採用を約150名増、 修繕費の増額)
- 異常時には、発生から30分以内に降車誘導の準備を指示する体制の徹底
ホームドアの45駅というのは、山手線の28駅より多い数字です。 整備は着実に進んでいます。
それでも引っかかるのは、対策が動き出したタイミングです。 1年前倒しできたのなら、なぜもっと早くできなかったのか。
出典
このコラムで使ったデータ
- 当ブログの運行情報記録(2024年11月1日〜2026年8月25日、京浜東北・根岸線676件) 検索・絞り込みができる一覧:https://jrechien.com/archive/
引用した資料
- JR東日本「山手線・京浜東北線 停電に伴う輸送障害の原因と対策について」2026年1月23日 https://www.jreast.co.jp/press/2025/20260123_ho01.pdf /テレビ東京WBS「山手線停電 作業ミスが原因 2025年12月も同様トラブル」2026年1月23日 https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/news/post_333871
- JR東日本「一連の輸送トラブルに対する弊社代表取締役社長コメント」2026年2月10日 https://www.jreast.co.jp/press/2025/20260210_ho02.pdf
- JR東日本「2027年度採用計画について」2026年2月26日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001364.000017557.html
- 国土交通省「東京圏の鉄道路線の遅延『見える化』(令和6年度)」2026年4月10日 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001995846.pdf(資料3-2)
